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原作が、日常をベースにしながら非日常に展開していく、僕の好きなテイストのファンタジーもので、ぜひやりたいと思いました。『陽だまりの彼女』を撮った時も感じたんですが、非日常を描くことで、それを映し鏡として日常を見直すことができるのがファンタジー作品の良さだと思うんです。この原作は、ある設定があって、“自分が愛する人とこういうことになったらどう思うんだろう、どう対処するんだろう”と考えさせられ、そこから日々の時間の使い方や、愛する人と思い出や絆を育むことがいかに大事かを再確認できる。そこが素敵なところだなと。映画にするには、設定の説明など難しい部分はもちろんあるんですが、それを超えたところの、ファンタジーが訴えかける強さとか、作品のメッセージが魅力的で、今描くべきテーマだと感じました。

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恋愛する中で成長していく主人公を描くのはもともと好きなんです。この原作にもそういう要素があって、高寿が愛美と出会って変化していく過程を描けたら良いなと思いました。イケメンをイケメンじゃなく見せるのも大好きなので(笑)、高寿を福士くんに演じてもらうのも楽しみでした。高寿は、芝居の表現としては時間軸に沿っていけるんですが、難しかったのは愛美ですね。愛美は気持ちのグラデーションが普通じゃなくて、デートしているときにも全く別軸の気持ちを持っていないといけないキャラクターです。その表現は(小松)菜奈ちゃんも悩んでいたし、僕も観客の方々に対してどのぐらい愛美の心情を見せていくか悩みました。さじ加減は非常に難しかったです。今回は、原作ファンの方もたくさんいらっしゃいますし、その人たちは愛美の事情を知った状態で映画をご覧になる。ですから、わかって見ても、わからない状態で見ても楽しめるものにしたかったんです。伏線はかなり丁寧に描いたつもりです。

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変に色がつきすぎてない感じが、今回の高寿のキャラクターにとって、すごく良かったです。高寿は、誰も経験してこなかったことを、あるリアリティをもって受け止めないといけない。それがファンタジーの難しいところであり、役者の力量が問われるところです。感情の発露とかリアクションが特殊すぎると、キャラクターとしては立つんですが、見ている観客の方の気持ちが乗りづらくなってしまう。ですから、リアクションの際の表情の度合いは何度も話しましたが、福士くんは感情の発露にしなやかさがあって、見ている方がスムーズに入っていける芝居をしてくれたと思います。

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撮り方で表情の変わる女優さんで、撮り甲斐があるんです。だからこそ他の監督がまだ見つけてない、今までにない表情を見つけて撮りたかったし、今までで一番美しく撮りたいと思いました。高寿が愛美を見てすぐ一目ぼれするわけなので、絶対的なキュートさも出したかったです。普通は言わないようなセリフも菜奈ちゃんが言うと日常的な中に非日常的なスパイスも感じられ、セリフと菜奈ちゃんのお芝居がうまくマッチングしたんじゃないかと思います。動きも含めてご本人の雰囲気に近いですが、声のトーンは普段よりちょっとキーを高めにしてほしいという話はしました。

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上山は高寿にヒントを与えるメンター(助言者)なので、高寿よりも思慮深さ、懐の深さを感じさせてもらいたかったんですが、東出くんはすごく良かったと思います。『アオハライド』では少し初々しさもありましたが、ぐっと大人の男としてのかっこよさが出てきた気がします。

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誰もが知っている京都と、穴場的スポットを両方入れたかったんです。劇中に登場するデートスポットはいろんな人が行く場所でいいと思うんですが、キャラクターが生活する場所は、それが物語の味わいにつながるので、特に印象に残るところにしたいと思いました。今回で言うと、高寿の部屋、学校、駅までの道、そして電車の中が生活圏内のあたりで、そこのパーソナルな空間の空気感がそのまま作品全体の空気感になる。最初に二人が歩く道を決め、そこをベースに、どういうマンションに住んで、最寄り駅はこういう感じかな、だとしたら近くにあるコインランドリーはこういう感じかなというように、バランスを考えて他のロケーションを決めていきました。

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白昼夢感というか、もしかしたら夢の中なのかな、ぐらいのテンションで、あそこもさじ加減に注意しました。あまりにシチュエーションが不思議すぎても、違和感があるし、日常の延長線上だけどどこか時が止まったような空気感を表現したくて、撮影部さんや照明部さんと話し合いながらこだわって作った部分です。

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今まで何本か映画を撮ってきましたが、思春期の頃に、“こういう映画を作りたい”と思っていた映画に一番近い作品ではないかと思います。大林宣彦監督の『時をかける少女』をはじめ、“尾道三部作”にかなり自分は影響されていて、自分の日常にこんなことが起こったら?とよく妄想や想像をしていたんです。そのことが、たぶん今の自分のクリエイティブに影響していると思いますし、特にこういうファンタジーの物語を描くにあたっては、そういう過去の影響がすごく大きい気がします。“尾道三部作”の他にも、今まで自分が見てきたファンタジー映画が血肉になって、今回の作品を作った感じはあるかもしれないです。

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誰かとの出会いが今の自分に大きな影響を与えていたり、過去に誰かが無意識に言った一言が、今の自分の支えになっていたりすることがあると思うんです。人はやっぱり一人では生きていけないし、人と関わりあい生きていく中で、自分がさらに成長するために必要なものとか本当に大事なものは、その瞬間にはそれとわからないことも多い。振り返らないとわからないものがたくさんあるからこそ、日々の日常をどう大事にしていくかが重要なのかなと。設定としては特殊なところがありますが、物語を映し鏡にして、日常を振り返ることができる作品になったと思いますので、何かを感じていただければ嬉しいですね。

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1974年8月29日生まれ、徳島県出身。
[主な作品]
『ソラニン』(10)、『僕等がいた 前篇/後篇』(12)、『陽だまりの彼女』(13)、『ホットロード』『アオハライド』(14)、『くちびるに歌を』(15)、『青空エール』(16)など。

[主な作品]
『Life 天国で君に逢えたら』『クローズド・ノート』(07)、『岳-ガク-』(11)、『僕等がいた 前篇/後篇』(12)、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(13)、『ホットロード』『アオハライド』(14)、『君の膵臓をたべたい』(17予定)など。

1979年8月26日生まれ、静岡県出身。
[主な作品]
『いま、会いにゆきます』(04)、『タッチ』(05)、『県庁の星』(06)、『そのときは彼によろしく』(07)、『神様のカルテ』(11)、『僕等がいた 前篇/後篇』(12)、『想いのこし』(14)、『くちびるに歌を』(15)など。

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