2014年8月に発売され、“泣けるラブストーリー”として話題となり、累計110万部を超えるベストセラーとなっている「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」(宝島社文庫・七月隆文著)。京都の美術大学に通う20歳の大学生・南山高寿が、電車の中で出会った女性・福寿愛美に一目ぼれしたところから始まる、切ない運命のストーリーである。西野智也プロデューサーは原作を読んで、すぐに映画化企画を立ち上げた。「設定の新しさや、ファンタジーと純愛がうまく合わさった内容に惹かれたんです。それに、少女マンガ原作の、高校生が主人公の映画が多い中、大学生を主人公にした小説を映画化できる点に新鮮味を感じました。また、京都が舞台であることも魅力的でした」
『僕等がいた 前篇/後篇』、『アオハライド』、『青空エール』等で三木孝浩監督と組んできた臼井央、春名慶両プロデューサーも同時期に原作を読んでおり、企画プロデュースとして加わることに。出版社から映画化権を獲得した後、「三木監督に撮ってもらいたい」ということで制作チームの意見が一致。春名プロデューサーが三木監督に電話すると、監督は偶然にも数日前にこの小説を本屋で見かけ、気になっていたところだった。「まずはタイトルに惹かれたんですが、原作を読んだら内容もすごく僕の好きなテイストでぜひやりたいと思いました」と三木監督は言う。
脚本は、『僕等がいた 前篇/後篇』、『ホットロード』、『アオハライド』でも三木監督と組んでいる吉田智子に依頼。まずはプロット作りを開始し、それぞれに意見を出し合いながら、原作者の意見も取り入れつつシナリオを練っていった。原作は高寿の目線でストーリーが進んでいくが、映画ではそこも大切にしながら、オリジナルの要素として愛美の視点も入れることに。また、三木監督のアイディアで、クライマックス近くで高寿が、ある一枚の絵を描くエピソードを加えるなど、映画ならではの要素も意識して企画が進められていった。

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高寿と愛美、二人だけのシーンが多くなる本作では、キャスティングが特に大きなカギを握ると言っても過言ではない。制作陣は、高寿役には最初から福士蒼汰を熱望していた。西野プロデューサーは、「これまで福士くんは高校生役を演じることが多かったので、等身大の大学生を演じるラブストーリーを見てみたいという思いがありました」と言う。また、三木監督も『ストロボ・エッジ』の現場を見学に訪れた際、福士と話す機会があり、「好青年で接しやすくて、勉強熱心で、面白い俳優さんだなと。一度お仕事をしてみたいと思っていたんです。今回、福士くんをやぼったくして、どんどんかっこ良くなる様子をグラデーションで描けたら面白いなと思いました」

一方、愛美役の小松菜奈も、制作陣の第一希望のキャスティングだった。かわいらしさがあり、かつミステリアスな雰囲気もある愛美のキャラクターに、小松がぴったりだと考えたのだ。三木監督は言う。「小松菜奈ちゃんはキュートで透明感があり、美しくてかわいいんですが、どこか非現実的でミステリアスな雰囲気もある。彼女のまだ知られていない部分を引き出したいなと思いました」。後に西野プロデューサーは、「完成した作品を見て、本当に小松さんにお願いしてよかったと思いました。今までで一番かわいい小松菜奈さんを三木監督とカメラマンさんが撮ってくれた」と手ごたえを語っている。

そして、恋愛初心者の高寿に恋のアドバイスを送る親友・上山正一役に『アオハライド』で三木監督作品に主演した東出昌大。制作陣は、当初東出がこの役を受けてくれる可能性は少ないと思っていたが、高寿の背中を押す兄貴分的な上山役を、以前三木監督と仕事をして気心知れている東出が演じてくれれば嬉しいとオファーしてみることに。すると、「三木監督はもちろん、プロデューサーやスタッフの皆さんとまた一緒に仕事ができることが本当に嬉しかったです」と東出は出演を快諾。こうして理想のキャストが揃うこととなった。

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撮影を前にして、三木監督はまず、この映画の世界観に合うであろう音楽を集めたオリジナルのサウンドトラックを作り、福士と小松、そしてスタッフ陣に渡した。そこには、他の映画のサントラや、80年代の洋楽などが含まれており、曲を聴きながら台本を読むなどして、イメージを広げてほしいという監督の意図があった。「特に今回はファンタジー映画なので、作品の世界観とか空気感のとらえ方が人によって違ってくる。言葉で説明するよりも、音楽からイメージしてもらうほうが良いと思ったんです」。加えて監督は、福士と小松に作品やキャラクターに対する思いを書いた手紙を渡し、スタッフには、イメージする映像に近い写真や映像なども見せて構想を伝えていった。福士は、「撮影が始まる前に、イメージの音楽をくださったり、お手紙を書いていただいたり、作品・キャストへの愛を感じました。僕もそれ以上の愛を高寿を通して返していけたらと思います」とクランクイン前にコメントしており、三木監督のアプローチが嬉しかった様子。 また、衣装も各キャラクターを作り上げるうえで一つのポイントとなっている。冒頭の高寿は眼鏡姿でファッションもどこか奥手そうな雰囲気があるが、愛美と出会い恋をしてどんどん洗練されていく。愛美は、男性が思う理想の女の子像をイメージして衣装を選択。白から始まり、徐々に彼女のキャラクターが明らかになるにつれ、衣装も色が付いていく。そして、上山は、和装からスカジャンまでどんな格好も着こなす、かなり個性的なファッション。見た目からも、上山のキャラクターを印象付けている。

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クランクインは、2016年1月15日、宝が池の東屋で高寿が愛美に「思い出の場所」について話すシーンだった。初日ということもあり、福士も小松も緊張感はあっただろうが、常に穏やかでにこやかな三木監督に迎えられ、笑顔で現場入り。監督は向こう岸の桟橋を指さしながら、宝が池でこれまでに高寿が体験してきたことを福士に改めて説明。そして何度かリハーサルをする間に、監督は愛美が髪を耳にかけるしぐさをプラスするなど、丁寧に演出していった。「あれは、菜奈ちゃんが何気なくやっていたしぐさを取り入れたものです。高寿が、愛美を見たときにかわいいと思えるしぐさをできるだけ細かく入れていこうという思いがありました」

京都を舞台にした原作に合わせ、ほとんどの撮影を京都で行った本作。スタッフやキャストは約1ヶ月にわたり、京都に滞在。伏見稲荷大社をはじめとする人気の観光地から、一本橋などの知る人ぞ知る穴場まで、多くの場所を訪れ撮影を敢行した。二人のシーンがほとんどだった福士と小松は、お互い気さくな性格で、かつ末っ子同士ということもあってか、すぐに仲良くなった。そしてそれが芝居にも表れている。三木監督は言う。「恋にときめく女の子の表情をいかにすくい取るかが一つのテーマだったので、福士くんと菜奈ちゃんのお芝居のコミュニケーションがすごく良かったことがプラスになりました」。福士と東出についても、共演シーンは少ないが、親友役ということもあり、撮影初日からタメ口で話すことを決めるなど、わきあいあいとした雰囲気で楽しく撮影していた。

今回印象的なのが、高寿と愛美の表情を真正面から捉えたカット。「二人ともスクリーンサイズの、正面のアップに耐えられる稀有な役者さんなので、正面の表情を多く撮りました」と三木監督。また、砂時計やアンティークショップなどの時間を感じさせるアイテムや場所、メリーゴーランドや空中ブランコ、コインランドリーなど回転するアイテムの映像を意図的に入れて作品のテーマを暗示している。

クランクアップは、鴨川で高寿と愛美が飛び石を楽しむシーンの撮影だった。実は一度別日に撮影していたのだが、その際、日が落ちかけていたため、リテイクすることに。「愛美がシャッターを押す時の高寿の表情に光があふれていてほしかったので、どうしてももう一度撮りたかった。結果、素敵な高寿の表情でクランクアップできたのはすごく良かったです」と三木監督は語る。すべての撮影を終えると小松は涙を見せ、「約1ヶ月、京都で撮影させていただいて、愛美の役がとても難しかったので、たくさん悩みました。でも、現場に行くと、皆が明るくて、私も頑張らなきゃなと思うことが、たくさんあって、本当に素敵な現場に恵まれたなって思いました。今は終わっちゃうのが、すごく寂しいです」とコメント。福士も、「すごく現場の雰囲気や空気感が良く、明日も撮影したいなと思える現場でした。それは、キャストは勿論、スタッフ皆さんのチームワークや仲の良さがあったからだと思います。毎日、(小松さんと)二人でのシーンばかりでしたが、本当に、愛美が小松さんで良かったなと思っています。監督が三木さんで良かったと思いますし、この現場のスタッフひとりひとりが、このメンバーだったから、僕は楽しく撮影できたのだと思います」と述べてさわやかにクランクアップを迎えた。

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主題歌はback numberの「ハッピーエンド」。back numberのショートフィルムやPVを監督したことのある三木監督は、ボーカル・ギターの清水依与吏との対談などを通じて「作りたいものやクリエイティブで大事にしているポイントがすごく共感できる」と感じていたという。「back numberの曲は日常生活で生まれる感情をすごく大事にしていて、そこに根差した曲なのが良いなと。この映画はファンタジーですが、見終わった後、その人の日常にどう作用するかが大事なのでback numberの曲が合うと思いました」
そこで今回、主題歌をback numberに依頼し、先方も快諾。すべての楽曲の作詞・作曲を担当する清水による、書き下ろしの主題歌が完成した。「どんな曲が上がってくるんだろうと楽しみにしていたら、すごく素敵な曲が上がってきて嬉しかったです」と三木監督が言うように、そのやさしくもせつない歌声とメロディが、日常の一瞬一瞬が愛おしく思える珠玉のラブストーリーを温かく彩っている。

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